言論統制    梓澤和幸


よくわかる住基ネットQ&A


(国分寺市での講演に際して書かれた文章ですが、そのまま掲載いたします)

1、住基ネットとは何ですか。そもそもよくわかりませんので詳しくわかりやすく教えてください。

  1999年の145国会で住民基本台帳法が改正になりました。
  なくなった小渕総理大臣の時代のことです。この改正で、国民一人一人に番号がつけられ、全国の住民票の記載事項すなわち氏名、住所、性別、生年月日がコンピュータ−ネットワークにつなげられることになったのです。
  全国的に結合された住民基本台帳ネットワークの略称を住基ネットとよんでいるのです。

2、いま国分寺では住基ネットの扱いはどうなっているのですか。

  住民基本台帳法改正法の施行は今年8月5日とされました。マスコミでは市長がこの日に住基ネットに参加しないと表明したことがめだちました。たしかに国分寺市は番号をつけた住民の個人情報を全国ネットに結合しませんでした。
  しかし、住民にはすでに番号がふられ、その通知が送られてきています。

3、国分寺市は今後どうすると言っているのですか。

  個人情報保護法が成立するまで住基ネットには参加しないといっています。法が成立することを条件に住基ネットに参加することを、8月15日付け市報、と8月16日付け住民票コード通知書で言っています。

4、ここで住基ネットの何が私たちにとって問題なのか教えてください。
  氏名、住所等が全国コンピューターネットにのせられるというだけでは何が問題なのかよくわからないのですが。

  国民に番号がふられて、納税、収入、パスポート、保険証、免許証、交通事故歴、病歴、などといった情報が一目でわかるようになります。
  将来は民間での買い物、クレジットカードによる買い物、融資などともつながれるのではないかという懸念も表明されています。
  国家による個人の監視です。
  これは単なる想像ではありません。小型コンピューターと同じ容量のある ICカードを希望によって交付されることになっていますがそのカードにあらゆる個人情報を書きこませ、それを国民に携帯させようという研究や実験が岡山市、三重県津市などでおこなわれています。
  任意のカードと言っても今携帯電話をもたないと不便なようにカードを持たないと一人前扱いされなかったり、変わり者とされるおそれがあります。
  また、住基ネットにのった個人情報をハッカーや、個人情報をほしがる不正なアクセスをする人々に盗まれたりのぞかれたりする危険もあります。
  コンピューターに侵入して、機密の情報をのぞいたり、混乱させたりする人をハッカーといいますが 「ハッカーにできないことはない」 と言われています。
  こんな事件があります。

  イ、クレジットカード番号299人分のリストが住所、氏名、電話番号などとともに閲覧可能におかれた (1998年5月)

  ロ、懸賞付きのアンケートに回答したユウザーの住所、電話番号などの個人情報のリストがもちだされ、関係のないウエブページで公開された。(1998年10月)

  ハ、あるホームページにアクセスしている人のドメイン名とアドレスが、つきとめられた。
  アメリカのネット犯罪のことを記した本では、あなたになりすまして、買い物、銀行講座からの預金引出し、助成金の受け取り、ストーカー、他人のアクセスしたサイトの特定、滞在時間の追跡などといった犯罪行為が詳しくしるされています。(「あなたの情報はこうして盗まれている」 チャールズジェニング著)

  住基ネットでは、自治体も国もこうした犯罪行為への予防措置を十分に行っていません。
  住民は世界中のハッカーに対して丸裸とされています。

5、市長は今後どうすると言っているのですか。

  個人情報保護法ができるまでは住基ネットに個人情報をつながないとしています。
  逆にいうと、個人情報保護法ができたらつなぐというのです。

6、それで問題はないのですか。

  問題はあります。
  第一に、5で述べたような安全措置がとられないままですから、住基ネットでは住民は裸のままです。
  こんなに大きなネットワークそのものが問題で、これが安全といえるためにはよほどの技術的措置がとられなければなりません。
  それに、番号がつけられて監視されることが問題なのですから、そのことを解決する措置が必要です。
  第二に個人情報保護法案自体が市民的自由を制約する大変な法律になっています。
  法案は公安委員会、警察が市民団体の名簿、ホームページ、メーリングリストに干渉出きる法律です。警察が報告命令や個人情報の使用中止命令を出すことができ、拒否すれば現行犯逮捕、捜索ができるという悪法です。
  こんな法律のできるのを批判のないまま待望する主張は大変問題であると考えます。
  また、行政機関が保有する個人情報保護法も出されています。防衛庁リスト問題のような、行政機関の中では個人情報はたれ流しというケースこそ取締りが必要です。行政によるプライヴァシーの侵害こそ防止をするための法律が必要なのです。
  市長はそのあたりのことについてはよく理解の上のことだと思うので、今後の進展を見守っていきたいと思います。