〈目次〉 ポリストライアルをどう防ぐか?―弁護人依頼権(続) (2004年11月8日) (0)前回の復習と補足 当番弁護士制度について説明した。この制度は依頼する人の費用負担はない。 継続して弁護を依頼するときに、費用負担が困難なときは 法律扶助協会が援助してくれることも知っておこう。 (1)前回の受講生からの質問 「自白偏重、ポリストライアルの恐ろしさを感じた。」 「いかなる防止策があるのか。教えてほしい。」 これにこたえて、今回は憲法と人権のテーマに代え、冤罪はどうしたら防止できるのか、に触れたい。 (2)冤罪の防止策 1.冤罪はなぜ起こるか、を正確に認識することから防止策が立てられる 袴田事件の事例 ・1966年6月30日味噌工場を経営する会社の専務一家4人惨殺・放火 ・犯人とされた元プロボクサー袴田巌さん ・自白の強要 ・最高16時間の取調べ ・排便も取調室の中で ・45通の自白調書 ・部屋から血染めのパジャマが押収されたと大宣伝 ─── しかし1年後犯行時の着衣としてシャツ、パンツ、ズボン、ステテコなど5点の衣類を発見。 パジャマの話消える。5点の衣類のうち、ズボンは小さすぎて袴田さんが穿けない事明らかになる。 ・着衣の血液の不自然 ・袴田さんがくり小刀で4人と格闘し、40以上の切り傷を負わせたのに、 袴田さんは、顔、上半身、手のひらには何らの怪我もしていない。 左手中指に切り傷があるだけ。 ・動機の不存在 ・裁判所が自白調書のうち、44通の証拠能力を否定→1通の検察官調書のみで有罪の認定 ・最高裁まで三審とも有罪を認定し、再審請求中であるが本年8月27日再審請求を棄却 イ 警察による長時間の取調べ・自白の強要 ロ 検察官の警察に対するチェック機能の欠如 ハ 捜査段階での被告人の自白・供述の任意性・信用性を裁判所が安易に認める傾向 ニ 捜査段階での弁護活動の不十分さ 2.防止策 イ 警察の取調べについて 裁判所が拷問・長時間の取調べの結果取られた自白調書の証拠能力を否定すること ── 現在はきわめて甘い 拷問・・・実はかなり行われている 長時間取調べ・・・朝9時から夜12時まで、とか夕方から一睡もさせず、 徹夜で調べ、翌日、午後9時に帰宅させる、などの例が 日常茶飯である。裁判所はこのような場合も任意性ありとする。 捜査の可視化―取調べを録音・録画すること オーストラリア・イギリスなどですでに実施 日本では相当の抵抗があるが、若干の可能性あり cf.IBA調査 ロ 検察官について ハ 裁判所 長時間の取調べがもたらす肉体的・精神的苦痛への想像力の欠如 大卒直後25歳で任官してしまう社会的経験の乏しいキャリア裁判官の問題 改善策として、弁護士経験10年以上の者のみ裁判官に採用する、 法曹一元などがある。cf.英米法の国 裁判員制度・陪審制度等(裁判員制度については後に触れる) ニ 捜査段階での弁護活動 被疑者国選弁護制度の実現 任意の弁護団活動の充実 cf.痴漢冤罪弁護団 (3)裁判員制度 冤罪の防止策として決定的な力を持つか 裁判員制度実施時期 5年以内 制度の内容 キャリア裁判官制度は維持 3人のキャリア裁判官+6人の裁判員 キャリアだけよりはよいが、審理期間がきわめて短縮化され、捜査の可視化、証拠開示など については未だ不透明 任意レポートに関するメモ 11月13日(土) 午後1時半開場 場所:西国分寺駅前 いずみホールにて 松本サリン事件、河野義行さんの講演会 「私はこう生きる、妻と。」 に出席の上、 希望者はレポートを11月29日(月) に学務課に提出すること。 字数:800字以内 ※上記の通り提出した受講生は期末に20点加算します。 |